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「大堀相馬焼」の魅力を次世代に伝えたい

陶芸家
山田 慎一さん
やまだ・しんいち
先輩移住者

—プロフィールを教えてください。

白河市大信で、福島県浪江町の伝統工芸品「大堀相馬焼」を作っています。
大堀相馬焼は、約350年前に相馬藩下で生まれて以来、現在の浪江町大堀で作陶されてきました。「青ひび」という、特定の粘土と釉薬を用いて陶器を焼くことができる美しい模様や、願いを込めて描かれる相馬藩の御神馬の絵「走り駒」、保温性・断熱性をもつ「二重焼」(にじゅうやき/ふたえやき)が特徴です。
本来、双葉郡浪江町大堀地区で制作して来ましたが、2011年の原発事故の影響で、白河市に避難しました。2013年6月に白河市大信に「いかりや窯」を再建し、現在までこの場所で制作を続けています。

 

—現在の大堀相馬焼の状況を教えてください。

相馬焼の従来の産地(浪江町大堀地区)では、作る、焼く、描く人が分業制で作業を担当し、相馬焼をつくってきました。しかし、震災によって職人たちがばらばらになってしまい、各職人が工程の最初から最後までの作業をしなければならなくなりました。それが大変なことのひとつです。
また、後継者は足りていない状況が続いています。浪江町出身の若者はもちろんいますが、現代では焼き物以外にも仕事がいっぱいある時代です。子どもたちの仕事の選択肢が増えれば、焼き物じゃなくても暮らしていけます。子どもに家業を継ぎなさい、という時代でもありませんし、福島県内各地に職人が散らばってしまった現在の産地では、子どもたちに親の背中を見せることも難しい。職人の仕事は、好きじゃないとなかなかできない仕事ですから、焼き物が好きな人に仕事についてほしいですね。

 

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—陶芸を志すインターン生などを、2017年から受け入れていらっしゃいます。学生や若い人に期待することはなんですか?

京都府内の美術大学などから、白河に来て、一緒に仕事に取り組むことができ、助かっています。若い人に期待することはやはり“与えられたことだけやる”より、まずは“自分はなにをやりたいのか”を考えて時間を使うことでしょうか。もちろん仕事なので、やれっていわれたことも大事だと思います。だけど、自分の目的意識ややるべきことは、自分自身で意識しながら取り組んでほしいですね。おろおろしていると、せっかくの福島にいるのに時間ばっかり過ぎてしまって。
「いかりや窯」に来ている人たちは、明確な目的意識が固まっているので、私たちは何かを押し付けたりはしません。ここで修行をし、将来相馬焼の技術を生かした仕事をしてもらえれば、この街に住まなくても、相馬焼の一部が継いでもらえることになる…。それでもいいんじゃないかなと思っています。

 

—若い方を受け入れる際に気をつけていることはなんですか?

なるべく“普段通り”にすることでしょうか。
格好つけないで、ゆるいならゆるいままで。インターンの方には、手を出せるところは手伝ってもらいますし、地味な手伝いもかなりしてもらっています。インターンは小学生向けの陶芸体験ではないので、良い面と悪い面の両方をありのままに感じてもらいたいです。この仕事をするにあたってのメリットとデメリットを極力話すようにしています。
若い人は色々な手伝いをしてくれるし、まだ受け入れを始めて間もないので、生産の手助けになる、というところまでは行っていないですが、今後はそういう部分でも助けてくれると思います。
若い人は、熱心に大堀相馬焼の歴史や特性を勉強してくれて。イベントなどに出店する時には、お客さんに向けて上手に説明をしてくれます。みんな明るいし、あんまり気を使わなくてすむので、気苦労がないですね。

 

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—白河についてはどうですか?

私は浪江町の出身で、一時期避難で東京に行っていた時期もあります。どうしても都会というのは私にはあんまり合わなくて…。白河はバランスが良いような気がしますね。田んぼもあるし、山もあるし、かといってそんなに買い物する際に不便かと言ったらそうでもないし。東京に近いのは非常に助かります。販売に行くときに、新幹線使えばすぐですし、通勤しようと思えばできるくらいの距離ですよね。
郡山にも近いし、住んでいる人たちの文化的な意識も高いと思います。私たちの仕事はそういう人が多くないと成り立たないですから。100円ショップの食器でいいやーという人が多ければ、仕事が成りたたない。福島県の焼き物に興味がある、お茶をやっている…そんな人がいるから、ここで仕事をしていけるのかなと思います。

 

—山田さん自身も引っ越しの経験があります

白河は人がくる地域なので受け口が大きいような気がします。ヨソから来た人に対しての疎外感はないような気がしました。引っ越してすぐ、地元の方が一緒にあいさつまわりをしてくれたり、野菜を持って来てくれたりと。
引っ越した時の戸惑いといえば、市立の幼稚園が無かったことでしょうか。まあ最初は、なんでないのかなと思いましたけど。そんなもんかなと。
子どもたちが学校とか小学校に入ったら、伝統を重んじるというか、その学校の伝統をそれぞれが大事にしていて、地域に誇りを持っている人が多いのかなと思いました。PTAの役員をずっとやっていたんですけど、PTAに集まって来る人たちが熱心で、負担があって大変だという声はあまり聞かなかったように思います。
子供たちもそういう環境のなかで育っているので素直な子が多いなあと。
学校に行くと、些細なことはもちろんあると思いますが、耳には届いたことはあまりなかったです。子育ての環境としては良い環境なんじゃないかな。足りない部分は特段感じなかったです。

 

—今後やりたいことは?

現在の工房は応急的な場所でもあるので、今後はやはりひとつの土地を決めて、工房と販売をしたいと思っています。作品を見せたり、販売したり、もっといえば研修生を泊めたりもできるような施設ができたらいいと思います。

サポータープロフィール

いかりや商店13代目店主。

1970年双葉郡浪江町生まれ。白河市在住。
国指定伝統的工芸品、大堀相馬焼「いかりや窯」の主人として作陶。
2011年、福島第一原子力発電所の事故に伴い浪江町外に避難。
2013年には、白河市大信に作業場を再建。母・妻・子2人の5人暮らし。

 

大堀相馬焼 窯元「いかりや商店」
住所:〒969-0308 福島県白河市大信増見下川原11-7

営業時間:10:00~16:00
     
※配達等に出ている場合もあるとのこと。お電話でお問い合わせください。

定休日:不定休

電話番号:0248-22-5080


●大堀相馬焼 窯元「いかりや商店」


●大堀相馬焼協同組合公式ページ 陶芸の杜 おおぼり
 

※記事の作成にあたっては、裏庭より情報提供をいただきました。